2013-07-26

我が家に雪ちゃんがやってきました

 ひきセンに一般の方からお便りをいただきました。ひきセン通信「七夕号」をご覧になって書かれたそうです。
 それでは以下、お便りからの転載です。


我が家に雪ちゃんがやってきました


我が家に、犬の雪ちゃんがやって来たのは、約十五年前の四月三日です。
やってきたその日に、ひきこもりさんを気に入りました。
だってひきこもりさん一日中家に居ます。しかも、一日中布団が敷いてあります。
ねえ~ねえ~遊ぼうよ。
ねえ~ねえ~お腹すいた。
ねえ~ねえ~なでなでしてよ、眠くなったよ。
その日からひきこもりさんの部屋のドアは開けっ放し。
だって雪ちゃん、犬です。ドアを開けても閉めれない。
一日中、ひきこもりさんの部屋に入ったり出たりです。
寝ているひきこもりさんの、顔を舐めたり、お腹の上に上がったりと、自由気ままです。
一日中、ひきこもりさんの部屋で過ごしました。

少し、大きくなって、暖かくなったら、雪ちゃん、お外に出たくなりました。
散歩の催促です。
ねえ~ねえ~ひきこもりさん、お外に行こうよ。お散歩しようよ!
ねえ~ねえ~。
ひきこもりさん、根負けして遂に散歩に出ました。
暗くなって、誰もいない、人目のない時間に出掛けました。
毎日、毎日、夜になると散歩です。散歩から帰って、疲れてぐっすり眠りました。
すると、いつの間にか、散歩の時間が早くなりました。

ねえ~ねえ~、明るい日差しの中でかけっこすると、気持ちいいでしょう?
青い空、緑の草むら、茶色の私。
そよぐ風、お日様浴びて、とっても似合うでしょう?

ねえ~ねえ~お外、お星様出たから寝ようよ。
又明日、朝日の原っぱをかけっこしようよ。私、お供します。
雪ちゃんとならどこにも行けた。
山、河原、原っぱ、駆け巡りました。
明るい太陽の中に誘い出ししたのは、生後45日、体重わずか1.5キロの犬の雪ちゃんです。
朝起き、夜寝て。当たり前の事が当たり前に出来るようになりました。

数年後。
ひきこもりさんの匂いを満載したトラックが、家を後にしました。
見えなくなるまで見送って、鼻をお空に向けて、フォーン、フォーン啼いていました。
「お家に入ろうよ。」
私の声は聞こえないようでした。
雪ちゃんの遠吠えを聞いたのは、後にも先にもこの時だけでした。


その日から、散歩から帰ると真っ先に、ひきこもりさんの部屋のドアを開けて、ゆっくり匂いを嗅ぎながら一周して出てきます。
自分が、留守にしていた時間に何か変化があったのか、無かったのかを確認しているかようでした。

そのうちに、ドアを開けても中に入らず、入り口にたたずみ、しばらくじーっと部屋の中を見ていました。
雪ちゃんの後ろ姿に掛ける言葉がありませんでした。
日々消えゆくひきこもりさんの匂い。もう帰って来ないって理解するまでには、かなりの日数が必要でした。

日の当たる畳の上でまどろむ雪ちゃんには、ご主人様のお供をして野山を駆け巡った、凛々しい姿はありません。野原に行っても、河原に行ってもすぐに飽きます。あんなに大好きだったボール遊びも、二~三回で終了。寝そべって過ごす事が多くなりました。
役目が終わった盲導犬のように思えました。
(あなたのこれからは、私が寄り添います。今までありがとう)

それから三年後。
雪ちゃんの様子が変わったのは、夏のある日。
「どうする?」ひきこもりさんにメールしました。
「帰りたい。バイトが終わるのが夜の10時。それから帰る」

雪ちゃんに伝えました。
「帰って来るよ」
食事も摂れない、水分も摂れない、ほとんど意識の無い中、わずかに左の耳が動きました。
(待っているんだぁ。)

日付の変わった頃。
ひきこもりさんの匂いをいっぱい嗅いで、声を聞いて、静かに息を引き取りました。
元気だった頃、一緒に駆け巡った、野や山を思い浮かべたのでしょうか?穏やかな最後でした。
その日の夜遅くに、ひきこもりさんからメールが届きました。
たった一言。
「雪ちゃんには、感謝している」

by ひーちゃんママ


犬の画像はフリー素材 今日もわんパグさんから連れてきました。